黄斑円孔
網膜の中心部分(黄斑)に小さな穴(孔)があいてしまう病気です。穴の大きさは通常、直径が300~400ミクロン(0.3~0.4ミリ)程で、大きな症例でも500ミクロン程度です。網膜の中心部に穴が開きますので、見え方に大きな影響が現れます。視力の低下、物が歪んで見える(歪視)、見えないところがある(中心暗点)と言った症状が出現します。
黄斑円孔の発生には硝子体の加齢性変化が関与しており、後部硝子体剥離(後部硝子体剥離の項参照)が起こる60歳前後が好発年齢で、女性に多い傾向があります。
黄斑円孔の発生過程
加齢によって硝子体の液化が進行すると、硝子体が網膜から剥離する後部硝子体剥離が起こります。下記の図のBとCでは中心窩に接着している硝子体が黄斑の中心部分(中心窩)を牽引します。中心窩への硝子体牽引が持続すると、本来は少し凹んでいる中心窩が、平坦になったり前方に浮き上がったりします。浮き上がった網膜の内部に空洞(嚢胞)が形成されます。この状態がステージ1で、視力はまだ(0.5)程度はあり、ふだんは両眼で見ているので視力低下に気付かないこともあります。網膜がさらに牽引され、嚢胞の縁の一部が破れて弁のようになり、網膜の全層が欠損している状態がステージ2です。視力はさらに低下し、歪視も強くなります。弁のようになっていた嚢胞上部の網膜が蓋〈ふた〉となって完全に分離した状態がステージ3です。視神経乳頭に接着していた硝子体がはずれ、後部硝子体剥離が完成した状態の黄斑円孔がステージ4です。ステージの進行に伴い、視機能の障害も強くなります。
治療
以前は黄斑円孔に対する治療法はありませんでした。しかし今では硝子体手術によって、黄斑円孔を閉鎖させ、視機能を改善させることが可能となりました。
後部硝子体剥離が完成していない症例では、網膜と接着している硝子体を網膜から剥離させ、後部硝子体剥離を完成させます。硝子体を切除した後、網膜の最も内側(硝子体に近い側)にあたる内境界膜という薄い膜を剥がします。これにより、手術成績が格段に向上し、かつ術後の再発を減らすことができます。その後、眼球内部にガスを注入し、手術を終了します。術後は円孔周囲の網膜をガスで押さえつけることにより、円孔が完全に塞がります。ですから術後しばらくは、ガスが円孔部に当たるようにうつ伏せの姿勢を保つ必要があります。
手術は一般的に、全層の網膜欠損が生じたステージ2~4の患者さんに行われます。ステージ1の段階では、硝子体皮質と網膜が自然に剥がれて治る可能性があるので、しばらく様子をみます。
術後の合併症として注意が必要なのは、網膜裂孔と網膜剥離です。眼球の前方に残る硝子体(前方の硝子体は網膜と強く癒着しているため切除できません)が収縮し、網膜を引きちぎるような力が加わるために、網膜裂孔、網膜剥離が生じることがあります。ですから術後は定期的に検査を受けるとともに、見え方の変化に気をつけて、異常を感じたらすぐに受診してください。
患者さんの約1割は、他眼(健康なほうの眼)にも黄斑円孔を発病します。ただし、既に後部硝子体剥離が起きていれば、黄斑が牽引される原因がないので、発病する確率はずっと低くなります。
HBCテレビ「今日ドキッ!」で近視の児童生徒の増加を取り上げていただきました
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