顕性遺伝・潜性遺伝、そして色覚多様性
- 「優性遺伝」「劣性遺伝」という遺伝に関する用語があります。
 - 最近は医療情報がマスメデイアに溢れていますので、
 - 皆さんもこれらの用語を目にする、耳にする機会があるのではと思います。
 
- 「優性遺伝」「劣性遺伝」は遺伝を理解するために基本となる用語です。
 - 遺伝子には、遺伝子が持つ遺伝情報が現れやすい遺伝子(優性遺伝子)と
 - 現れにくい遺伝子(劣性遺伝子)があります。
 - 優性遺伝子の情報が現れた遺伝形式が「優性遺伝」、劣性遺伝子の情報が現れた遺伝形式が「劣性遺伝」です。
 
- 決して、優性遺伝子が優れた良い遺伝子で、劣性遺伝子が劣った悪い遺伝子という意味ではありません。
 
- ところが、私たちが日常会話で使う「優・劣」には、
 - 良し悪し・好ましいものと好ましくないものと言う意味を含みます。
 
- 遺伝というとてもナイーブな事柄に対する用語ですので、
 - 「優性遺伝」「劣性遺伝」という用語に、少々違和感を感じます。
 
- 日本遺伝学会は9月に、長年使ってきた「優性」「劣性」という遺伝学用語を別の用語に変更することを提案し、文部科学省に要望書を提出しました。
 - 「優性」は「顕性」に、「劣性」は「潜性」に変更したいとのことです。
 
- 日本遺伝学会の要望が承認されると、「顕性遺伝」「潜性遺伝」と正式に名称が変更されます。
 
- この要望書の中で変更を求められた用語の一つに「色覚異常」があります。
 - かつては「色盲」「色弱」という言葉が使われていましたが、最近は教科書でもメディアでも「色覚異常」に統一されています。
 
- 「色覚異常」はごくありふれた状態で、日本人男性の5%、20人に一人がこの状態に当てはまります。
 - 日常生活に特段の不便がないことがほとんどで、「異常」と呼称することに違和感があります。
 - 日本遺伝学会の要望書では、「色覚多様性」と呼ぶことが提案されています。
 
- 遺伝情報は個々人でバリエーションがあり、
 - 遺伝情報が表現する容貌や性格などにバリーションが生まれ、個性となります。
 - 色を感じる感覚の違いも個性で、多様性の一つということでしょう。
 
- 自分の遺伝子配列を詳細に検査することができる時代が近づいており、自身の遺伝情報が急速に身近になりつつあります。
 
- 遺伝情報を正しく理解し、誤解を避けるために、用語の変更は必要なのかと思います。
 
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                    理事長・院長