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糖尿病網膜症による牽引性網膜剥離に対する27ゲージ硝子体手術

糖尿病の罹病期間が長くなるほど、血糖コントロールが不良なほど、糖尿病網膜症の発症頻度が高まります。世界的には糖尿病患者の3人に一人が糖尿病網膜症を発症しており、視機能障害を有している症例は2021年には約2,854万人で、2045年には1.5倍強の4,482万人に増加すると予想されています。

糖尿病網膜症の中で、特に視機能に影響を与える病態が、糖尿病黄斑浮腫(DME)と増殖糖尿病網膜症(PDR)です。DME治療の主体は薬剤の眼内注射で、症例の眼内の状況により硝子体手術も施行されます。

一方、PDRは網膜の表面に新生血管形成を特徴とする糖尿病網膜症が重症化した状態で、新生血管の牽制が進行すると、線維血管増殖組織を形成し、この血管が破綻すると目の中に大出血(硝子体出血)を来たしたり、線維血管増殖組織が収縮し網膜を引っ張ると牽引性網膜剥離が生じます。牽引性網膜剥離が網膜の中心部まで及ぶと重篤な視機能障害が生じます。また、血管新生緑内障という難治性の緑内障(高眼圧)や、視神経を栄養する血管が詰まり視神経機能が障害される虚血性視神経症を発症することもあります。

硝子体出血や牽引性網膜剥離に対する治療は硝子体手術です。

硝子体手術は技術と機器の進歩により、手術時間の短縮、創傷治癒の改善、術後炎症の軽減、視力回復の促進などが可能になっています。

日本人患者を対象に、PDRによる牽引性網膜剥離に対する27ゲージ硝子体手術の有効性を検証した順天堂大浦安病院眼科からの論文が、日本眼科学会の機関誌のJapanese Journal of Ophthalmologyに掲載されましたので紹介します。

27ゲージ硝子体手術は当院でも施行している低侵襲小切開手術で、極細の器具を使うため、傷口が小さく、回復が早い手術法です。

本研究では、順天堂大浦安病院眼科で施行したPDRによる牽引性網膜剥離に対する27ゲージ硝子体手術74名94眼の治療成績が検討され、術後平均23.1ヶ月の経過観察でした。

平均術前視力は0.05と著しく低下しており、平均術後視力は0.2まで顕著な改善が認められました。最終的な網膜復位率は97%でした。

本研究の解析から、術後視力の予後を悪化させる要因が明らかになりました。

それは、術前に中心部網膜が剥離(黄斑剥離)していること・線維血管増殖組織が広範であること・術後の血管新生緑内障の発生でした。

本研究から、27ゲージ硝子体手術はPDRによる牽引性網膜剥離の治療に有効であるものの、重度の牽引性網膜剥離や術前に黄斑剥離のある症例では視力改善が限定的であることがわかります。

やはり早期発見・早期治療が術後の良好な視機能回復には重要のようです。

糖尿病網膜症は重症化しないと見え方に変化が現れません。糖尿病の方は定期ていな眼科検診が大切です。

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