萎縮型加齢黄斑変性の治療薬剤:SyfovreとIzervay
加齢黄斑変性症(AMD)は、高齢者における視機能低下の主要な原因です。
2040年までに全世界で2億8,800万人が罹患すると予測されています。
AMDの初期・中期ではドルーゼンと呼ばれる黄色の沈着物や色素異常が黄斑網膜に生じます。
後期では地図状萎縮(萎縮型AMD)や黄斑新生血管(滲出型AMD)などの病変が生じ、視機能が著しく低下します。
滲出型AMDの病因には血管内皮増殖因子(VEGF)というタンパク質が関与しており、VEGFの働きを抑制する薬剤の登場により、治療成績が飛躍的に向上し、視機能の維持向上を図ることが可能になりました。
萎縮型AMDについては有効な治療法がありませんでしたが、2023年、米国食品医薬品局(FDA)は二つの薬剤を治療薬として認可しました(以前にこのブログで紹介いたしましたが、日本ではまだ未承認です)。
萎縮型AMDは東洋人と比べ白人に多いタイプのAMDで、治療薬の開発が待望されていましたので、米国では二つの薬剤(商品名:SyfovreとIzervay)がホットな話題になっています。
AMDの初期段階の特徴であるドルーゼンには、補体経路成分などの炎症促進因子が含まれており、ドルーゼンが拡大・融合する過程で補体経路が活性化されることで炎症が惹起され、網膜色素上皮細胞の機能が阻害されたり、脈絡膜毛細血管板が喪失するため、萎縮型AMD発症の重要な要因とされています。
萎縮型AMDの治療薬であるSyfovreは補体経路成分のC3、IzervayはC5の働きを抑える薬剤です。
いずれの薬剤も毎月あるいは隔月の眼内注射を行うことで、無治療と比べ地図状萎縮と呼ばれる黄斑網膜の萎縮病巣拡大を15~20%程度抑える効果があります。
ただし、視機能の維持・改善をもたらすことはできません。
また、滲出型AMDに移行する症例の割合が無治療症例と比べやや高率であったり、網膜血管炎や網膜出血が生じた症例が報告されるなどの課題があるようです。
米国眼科学会のホームページの記事では、治療にあたっては薬剤の効果と課題を十分吟味するように推奨しています。
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