若年者の裂孔原性網膜剥離
今月号のOphthalmology Retinaに、若年者の裂孔原性網膜剥離に対するラッシュ大学(米国シカゴ市)の手術成績が掲載されました。
裂孔原性網膜剥離(いわゆる網膜剥離)は主に40歳以降に発症する病気ですが、10代や20代といった若い世代にも発症します。
眼球壁に接着している網膜が眼球壁から剥がれる病気が網膜剥離で、色々な原因で網膜は眼球壁から剥がれることがあります。
裂孔原性網膜剥離は、網膜に破れ目(網膜裂孔)ができ、目の中の液体が網膜裂孔を通って網膜下にまわり込み、網膜裂孔周囲の網膜が剥がれる網膜剥離が生じます。
剥離した網膜は光を感じることができないため、剥離した網膜の範囲が拡大すると視野欠損が進行します。
この論文の対象は、裂孔原性網膜剥離で手術を受けた30歳以下の101人です。
61%の症例は近視にともなう網膜周辺部変性巣からの網膜剥離で、外傷に起因する症例が7%、内眼手術後の症例が6%でした。
69%の症例で強膜内陥術という術式が選択され、25%は強膜内陥術と硝子体手術が併施され、6%は硝子体手術が施行されました。
強膜内陥術単独と強膜内陥術+硝子体手術は初回手術での網膜剥離治癒率がいずれも90%ほどで、一方、硝子体手術では75%でした。
従って、若年者の裂孔原性網膜剥離は従来から言われている通り、強膜内陥術が第一選択の手術治療であると論文の著者らは述べています。
また、12例は初診時に両眼に裂孔原性網膜剥離が発生しており、1年間経過観察ができた症例の14%、5年以上経過観察ができた18%で、経過中に他眼に網膜裂孔あるいは裂孔原性網膜剥離が生じました。
このことから、裂孔原性網膜剥離の既往がある患者は他眼にも発症するリスクが高いため、長期にわたって定期検査を行う必要があると結論づけています。
当院でも若年者の裂孔原性網膜剥離に対しては強膜内陥術を第一選択の術式として施行しています。
当院での強膜内陥術の網膜剥離治癒率は今回の報告よりもさらに良好です。
また、当院では、「裂孔原性網膜剥離が生じた症例の他眼は、裂孔原性網膜剥離の既往の無い症例と比べ10倍、裂孔原性網膜剥離を発症しやすい」と報告されていることを患者様に説明し、定期的な経過観察の必要性を伝えるとともに、
飛蚊症の悪化や視野欠損を自覚した際はすぐに受診するようにと説明しています。
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