大気汚染と加齢性眼疾患
最近、温暖化の影響で、世界各地で大規模な山火事が発生し、甚大な被害が生じています。
同時に、山火事などで飛散する汚染物質が原因となる大気汚染が懸念されています。
世界保健機関(WHO)は「世界に住む人々の約91%が、WHOの基準を超える大気汚染レベルの場所に居住している」と報告しており、
「大気汚染が原因で死亡している人は世界で毎年700万人に上る」と指摘しています。
特に、大気中を浮遊する直径2.5μm以下の粒子状物質(PM2.5)は、非常に小さいため肺の奥深くに入りやすく、ぜんそくや気管支炎といった呼吸器系疾患や循環器系疾患の発症リスクを高めます。
目は大気と接触しているので、大気汚染の影響を受けやすいと推測されており、大気汚染と眼疾患の関連性の報告や、大気汚染物質が目の細胞に及ぼす影響についての研究報告がなされています。
その結果、一酸化炭素(CO)とPM2.5への被曝量が多いほど加齢黄斑変性の発症リスクが高くなることが確認されました。
加齢黄斑変性症は、網膜中央部の黄斑に脂質などの老廃物が加齢に伴い蓄積し、光を感じる細胞が脱落したり、新生血管が生じて視機能が障害される疾患です。
一酸化炭素やPM2.5に暴露されると、網膜内の活性酸素が増え、酸化ストレスの増加が持続することで、加齢黄斑変性症の発症リスクが高まるようです。
一方、今回の検討では、大気汚染物質の白内障発症への影響については確認されませんでした。
自動車の排気ガスなどにはオゾン(O3)が高濃度に含まれています。
オゾンは紫外線を遮断する作用があり、白内障の誘因となる紫外線の眼への照射を減らす効果があるため、大気汚染による白内障のリスクが確認されなかったと論文では考察しています。
緑内障については、PM2.5への被曝量が多いほど発症リスクが高くなることが確認されました。
緑内障は、視神経線維が徐々に障害され、視野に感度の低下した領域が出現し、視野障害が進行する疾患です。
目の中の液体(房水)の排泄路が経年的な変化で目詰まりを起こし、房水流出が悪くなることが発症の要因と考えられています。
PM2.5は房水排泄路の酸化ストレスを増加させ、炎症性の変化により房水排泄路の目詰まりを助長し、緑内障の発症リスクが高まるようです。
汚染された大気に接し無いようにすることは無理ですが、将来ために、大気を汚さないように個人ができることを心がけなければなりませんね。
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