飛蚊症と近視
飛蚊症は、目の前に糸くずやタバコの煙のような影が動いて見える症状です。目を動かすと、影も移動します。影の大きさや形、色合いなどは様々です。
青空や白い壁、明るい所を見つめた時に、気がつきやすくなります。
一般的に年齢とともに飛蚊症を自覚する方が増えるのですが、20~30歳代で既に70%以上の方が、軽度の飛蚊症を有しているという報告があります。
飛蚊症を引き起こす原因のほとんどは、目の中の硝子体(しょうしたい)と言う部分の加齢性の変化です。
硝子体は眼球内の後方2/3を占めるスペースの名称で、このスペースに硝子体ゲルと呼ばれる生卵の白身のような透明なゼリー状の物質が詰まっていて、光が網膜まで届くための通り道となっています。
透明なゼリー状の硝子体は、その99%が水で、残り1%の成分はコラーゲン線維とヒアルロン酸です。
コラーゲン線維が網目状の構造を作り、網目状の空間に大量の水分を保持したヒアルロン酸が充満することで、硝子体は透明なゼリー状態を保持しています。(この構造は、皮膚のみずみずしさを保つ機序と似ています)
硝子体のコラーゲン線維は透明なのですが、加齢に伴いコラーゲン線維が結合し太くなると、コラーゲン線維の透明性が失われ、線維状の混濁物として眼球内を浮遊するようになります。
光の通り道にこの線維状の混濁物があると網膜に影を落とし、飛蚊症を自覚するようになります。
線維状の混濁物はドロッとしたゼリー状の硝子体の中に浮遊しているので、線維状の混濁物は眼球の動きに合わせて硝子体中を移動し、網膜上の影も動くため、あたかも目の前に蚊が飛んでいるように感じます。
硝子体線維の変化は年齢とともに進むので、飛蚊症は加齢に伴い強くなる傾向にあります。
浮遊する影の数が増えたり、大きくなったり、影が濃くなったりしますが、通常は視機能を悪化させることはありません。
この硝子体の変化は、近視の程度が強いほど、より若いうちから生じ、進行が早いことが知られています。
したがって、近視の方は飛蚊症を自覚する年齢が若く、症状の程度が強い傾向にあります。
硝子体の変化が経年的にさらに進行すると、50歳を過ぎた頃から、網膜と接着していた硝子体が網膜から剥離する、後部硝子体剥離が生じる方が増えてきます。
後部硝子体剥離が生じると、視神経と硝子体を接着させていた輪状の線維組織が硝子体の中を浮遊するため、濃い影が動いて見えるようになり、突然、飛蚊症が悪化します。
後部硝子体剥離による飛蚊症は、当初は影が濃いため煩わしさや不安を強く感じるのですが、経過に伴い影は徐々に淡くなり、症状は緩和します。
強度近視の方は強度近視ではない方と比べ、後部硝子体剥離が10歳ほど若くに起こると報告されています。
後部硝子体剥離は加齢による現象なので、本来は加療の対象にはなりませんが、後部硝子体剥離が生じる際に、数パーセントの方に網膜裂孔が発生します。
網膜裂孔が発生し放置すると、裂孔原性網膜剥離(いわゆる網膜剥離)へと進行し、視野欠損や視力低下を招いてしまいますので、網膜裂孔や網膜剥離には早急な治療が必要です。
飛蚊症が急に悪化した場合は、要注意です。早急な眼科検査をお勧めします。
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