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日本人の失明原因の第4位である加齢黄斑変性に対する治療薬の開発が相次いでいます。
現在、滲出型加齢黄斑変性の治療は、血管新生に重要な作用を有する血管内皮増殖因子(VEGF)というタンパク質の働きを抑制する薬剤を眼の中に注射する抗VEGF療法が標準です。
抗VEGF療法は、滲出型加齢黄斑変性で発生した脈絡膜新生血管の活動性を制御することができます。
ただ、既存の抗VEGF剤には眼の中への注射を長期的に継続しなければならないなどの課題があり、世界中の製薬企業が課題解決のため、新薬の開発に取り組んでいます。
先日のブログでは、既存の抗VEGF剤と比べ作用効果が強く、投与間隔の延長が可能で、12週毎の投与で治療効果が維持できる薬剤が日本で使用開始となったことを紹介しました。
2020年7月24−26日、米国網膜専門家協会の年次会議がバーチャルで開催されました。
この会議で、スイスに本社のあるロシュ社が開発中の滲出型加齢黄斑変性治療薬であるファリシマブの臨床第2相試験Stairway trialの結果が報告されました。
ファリシマブを12週毎あるいは16週毎の間隔で目の中に注射することで、既存の抗VEGF剤を4週毎投与するのと同様の治療効果を得ることができました。
ちなみに、7月30日にはJAMA Ophthalmology電子版にファリシマブの臨床第2相試験Avenue trailの結果が掲載され、ファリシマブの安全性が報告されました。
ファリシマブはVEGFとアンギオポエチン2(Ang-2)の両方の働きを抑制する薬剤です。
アンギオポエチンには幾つかの種類があり、血管形成に関わるタンパク質です。
アンギオポエチン1(Ang-1)はTie-2受容体に結合し、血管の成熟を促すことで新たな血管の発生(血管新生)を抑制します。また炎症反応も抑制し、血管新生が抑えられます。
一方、Ang-2もTie-2受容体に結合します。病的な状態でAng-2の分泌が増加すると、Ang-2 と結合したTie-2受容体が増えるため、Ang-1はTie-2受容体と結合しにくくなります。
その結果、Ang-1の血管新生抑制作用が抑えられ、血管新生が起こりやすくなります。
ファリシマブはVEGFとAng-2の両方を同時に抑制することで、血管新生に関わる異なる二つの経路を抑制し、既存の抗VEGF剤を上回る効果と投与間隔の長期化を狙っています。
現在、臨床使用の認可を受けるため臨床第3相試験が行われています。
同時に糖尿病黄斑浮腫に対するファリシマブの有効性を検証する臨床第3相試験も進行中です。
投与間隔の延長は患者様の負担軽減につながります。
是非とも良い結果が出ることを期待してやみません。